コラム・体験談

自閉症の長男に歯磨き嫌いを克服させるためのチャレンジ

自閉症と診断された我が家の長男は、現在23歳になったばかりです。「横浜市愛の手帳A級」を持っています。長男はとにかく歯磨き嫌いで、いかにして歯磨きをしないようにできるかと、日々隠れるようにして過ごしています。

長男がどのようにして歯磨き嫌いになり、どんな工夫をして克服していったのか。そして幼稚園時代に自閉症と診断されてから、どのような歯磨きライフを過ごし、歯医者さんと付き合ってきたのかをお伝えできればと思います。

いきなり歯磨きが嫌いになった自閉症の長男

幼い頃は嬉しそうに歯ブラシを持って歯磨きをしていました。それが、急に歯磨きをしなくなりました。祖父母と一ヶ月ほど暮らしていたことがあり、そこから戻ってきた日からです。

子育てに失敗したと思っている私の両親は、孫の世話を通して、もう一度「子育て」したかったと話してくれたことがありました。

自分が何をしたいのかも言えない孫に手を焼いた祖父母は、さとすように話しかければいいものを、どうやら手を上げていたようです。

およそ推測できていたことなのですが、孫にまでするのかと驚きました。長男は祖父母の家から帰った日を境に歯磨きをしなくなったのだと把握したのは、つい最近のことでした。

NHK Eテレ(おかあさんといっしょ)へのこだわり

そんな長男の歯磨きに関して、歯ブラシを持つことから始めないといけなくなり、どうしたら良いものかと悩みました。

まず「しまじろう」というアニメキャラクターの存在があることを雑誌で知り、すぐに歯磨き練習向けのしまじろうのぬいぐるみを購入してみました。

また当時、長男はNHK教育テレビ(NHK Eテレ)を見るようになっていました。特定のテレビ番組ではなく、チャンネルはNHK教育テレビだと決めているのか、「おかあさんといっしょ」という番組をひたすら見ていました。

そして、20歳を過ぎた今でも「おかあさんといっしょ」を見ています。もしかすると、これは祖父母のNHKしか見ない、見せない方針によるものだったのかもしれません。

しまじろうのぬいぐるみと一緒に再び歯磨き指導

3歳年下の弟の歯磨きをしていくのと並行して、再び長男の歯磨き指導を始めました。先にしまじろうのぬいぐるみの口を開けて、歯ブラシを入れて磨く。それを見せながら、再び興味を持ってもらおうと思っていたのです。

ですが、長男の口を開けさせて歯ブラシを入れると、歯ブラシを舐めただけで押し出してくるのです。それでも、うがいだけはしていました。磨くのは嫌だけど、うがいは良いらしいです。

たまたま、歯磨きをテーマとした内容を「おかあさんといっしょ」でやっていた時、それをジッと見ていた長男は何を思ったのか、自分の歯ブラシを持ってきて一緒に歌い出したのです。

その頃は、録画機能をフル活用して、1日に何回も見せていました。夜、寝る前も一緒に見て、一緒に歯ブラシを持って歌っていました。

半年が経ち、ついに改善の兆しがあらわれた

そのうち、その歯ブラシを口の中に入れることができるようになりました。歯磨きができる日が近いことを、私が確信できた時でした。

祖父母の家から自分の家に帰ってきて半年。長男は、やっと自分から歯ブラシを口の中に入れて、歯磨きをすることができたのです。

「さすが、お兄ちゃんだね。歯磨き、上手だねえ」そう言いました。すると、可愛い表情で、ドヤ顔をしていました。

再び自分で歯磨きをするようになり、仕上げ磨きをする時は「今度は、お母ちゃんが綺麗にしてあげるね。そしたら寝ようね」と声を掛けて、仕上げ磨きをしていきました。

障害があろうがなかろうが、子どもは分かっているのです。その頃は、まだ自閉症だとは思ってもいませんでした。

幼稚園時代に自閉症と診断されても・・・

自閉症と診断されたのは、幼稚園の年長さんになる春先の頃でした。その頃には弟も3歳くらいになっていて、兄弟揃って歯ブラシを持ち一緒に歯磨きタイムを楽しんでいました。

しまじろうのぬいぐるみを抱きかかえ、歯磨きをさせてガーゼで口の中を拭いていく長男。それは、私が弟のほうにしていた仕上げ磨きです。ああ、ちゃんと見ているんだな。分かっているんだなと思った瞬間でした。

小・中学校と養護学校での歯磨きと歯医者さん

小学校、中学校、養護学校の9年間で、転勤などで引っ越した回数は5回ありました。

周りの環境に恵まれ、学校でも昼食後の歯磨きを徹底してくれたおかげで、1日2回の歯磨きができていました。誰かがやると、それを見て自分もやる。そんな感じです。

そして、一年に数回、歯医者に通って歯の掃除をしてもらっていました。

学校に通っていると、内科、眼科、歯科検診をしますよね。3歳下の弟のほうは必ず引っかかるのですが、長男は不思議と引っかからないのです。虫歯がないだなんておかしいな、変だなと思っていました。

なぜなら、私が仕上げ磨きできなくなっていたからでした。仕上げ磨きをした方が良いのは分かっているのですが、当時は長男が嫌がって全くさせてくれなかったからです。

そこで、弟の歯医者通いの時、一緒に連れて行き長男も歯の掃除(クリーニング)をしてもらうことにしました。

歯科医師会の方に聞いてみた虫歯にならない謎

先日、長男の作業所で家族会があり、参加してきました。テーマは「お口の中を綺麗に」で、講師は区の歯科医師会の人でした。

「口の中を清潔に保ち、噛む力、飲み込む力を向上させることが大切です。それには一口30回噛んで、ゆっくりと食べる。飲み込むように早食いはせずに、また、ゆっくり過ぎないように」とのことでした。

そして、唾液で虫歯になりやすいかどうかが分かるとのことだったので、試してみました。最後の質問タイムに、私は長男のことを聞いてみました。

私:「一年に数回、歯医者に掃除をしてもらいに通っていますが、歯磨きをしません。歯磨きしないのに虫歯がないと言われたのですが。そんなことってあるのですか?」

講師:「たとえば、唾液量が多い、甘い物を頻繁に食べない等の個別要因があるようでしたら、歯磨きをしなくともむし歯にならないという可能性はあります。」

その甘い物というのは、糖類の多いケーキやチョコレートを主に、お饅頭やあめ玉、団子や和菓子の中のあんこなどのことだそうです。

長男は甘いものが好きではなく、チョコレートであればたまに食べることがありますが、量は食べませんし、あめ玉なんて毛嫌いするほど苦手なお菓子だったりします。

まとめ|歯磨き嫌い克服の希望の光

ある時、ホテルで歯ブラシが無造作に置かれているのを見たのか、長男は自ら歯を磨いていました。磨く音が聞こえ、思わず「歯磨きしているんだ、凄いなあ」と私は思いました。

試しに、家でも無造作に置いてみることにしました。すると、磨いてくれたのです。ようやく長男の歯磨き嫌いを克服する、希望の光が見えてきました。

正直、自閉症のある長男の歯磨きは簡単ではありませんでした。過去にいろんなことがありましたが、周囲の環境にも恵まれたことで、少しずつですが前に進んでくることができました。

自閉症のお子さんと暮らされていて、私のように歯磨き(仕上げ磨き)に苦労されている親御さんも多いかと思います。とにかくやれることをやって、焦らないこと、慌てないこと、あきらめないことがポイントです。

~「しあげはおかあ~さ~ん♪」は魔法の言葉!?~

視覚的に伝えたいことをサポートしてあげることはASDの方に対してはとても有効です。「しまじろう」や「おかあさんといっしょ」を活用しながら、コラム筆者はとても上手に歯磨きを導入していました。以前、他の方のコラムにも「おかあさんといっしょ」を使い、歯磨きを導入することができたという内容がありました。思い返してみると、私自身も幼かった頃「おかあさんといっしょ」の「はみがきじょうすかな?」のコーナーにはクギ付けになって見ていたような気がします。「しあげはおかあ~さ~ん♪」という決め台詞。実はものすごい効果があるのかもしれませんね。

[監修歯科医師:黒田 英孝]

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ライターネーム「Asami」
ライターネーム「Asami」
50代の紅茶好き主婦です。電子書籍を執筆している書籍作家です。紅茶は生活習慣病の予防ができる成分が多く含まれており、口腔内を清潔にしてくれます。色々と情報を発信中です。