コラム・体験談

広汎性発達障害の息子が歯科治療を受けられるようになるまで

広汎性発達障害のため自閉傾向のある19歳の息子は、特別支援学校を昨年に卒業し、現在はB型支援施設で毎日楽しくお仕事をしています。

今回は息子が小さかった頃の歯磨き、うがい、歯科治療で苦労した経験をもとに、それを私たちがどのように乗り越えていったのかを振り返り、息子のような障害特性を持つ子どもの親として成長を見守っていくための心構えを一緒に考えていければと思います。

発達障害の息子が小さい頃の歯磨き/うがい/歯科治療

規則正しく毎日の日課をこなすことが精神的な安定につながる息子は、食後の歯磨きは欠かさずに行います。

現在は虫歯もなく、うがいもでき、定期的に歯科検診も受けながら快適に過ごしていますが、小さな頃は歯磨き・うがい・歯科治療でかなり苦労をしました。

お子様の歯磨きや歯科治療でお悩みのお父さん・お母さんたちにお伝えしたいことは、お口の中のことは、親が焦らず、せかさず、そして不安にならないということです。

お子さんのペースでサポートしていけば、いつ出来るようになるかは人ぞれぞれですが、いつかは歯磨きも、歯科治療も出来るようになります。

自閉症特有の症状が激しく一番大変だった幼少時代

障害のあるお子さんを持つ親御さんの多くは、歯磨きや歯科受診に課題を抱えているものだと思います。我が家も例外ではなく、一番大変だったのは幼少時代の3~5歳の頃でした。

言葉がほとんど出ず、聴覚が敏感で、水に濡れることを異常に嫌がり、こだわりがあるなど自閉症スペクトラム特有の症状が激しい時期でした。障害があるということのショックと戸惑いがあり、食事やトイレ、着替えなど様々な面でどのように教えたらよいのか、親としてもパニックになっていました。

食後の歯磨きも親としては憂鬱なことのひとつでした。歯ブラシの感触も嫌がり、口を開けるのも困難、うがいどころか一度水を口に入れたら出すのを嫌がりごくんと飲むだけ。

このような状態では当然虫歯になってしまう、歯医者に行くなどとんでもない、と恐怖も感じていました。時には無理やり歯磨きをし、泣かせてしまったこともありました。

幼稚園に通い始めて息子の特性に合った伝え方に気づく

そんな息子に変化が現れたのは、幼稚園に通い始めて、字や絵、歌や教育番組をよく見るようになってからでした。

息子は言葉がなかなか出ませんでしたが、好きなことに関しての記憶力はよく、数字や文字、国旗や九九などはあっと言う間に覚えてしまい、絵や歌も大好きで、好きなものは何回でも聞き、何回でも同じものを書いて楽しんでいました。

教育番組の歯磨きをする映像や歯磨きの歌に触れて、幼稚園で毎日歯磨きを皆で行うのが当たり前となると、いつの間にかあら不思議。すんなりと歯磨きができるようになりました。

口で言って聞かせるよりも絵や映像、文字・数字で伝えたほうが、数倍理解力が高いということがわかってからは、歯磨きビデオや絵カード、言葉カード、時計などを使用して歯磨きの大切さ・やり方などを伝えてあげると、さらに喜んで取り組むようになりました。

そして小学校に通いだす頃になると、口に入れた水をすすいで出せるようになったのです。

虫歯発見。理解ある歯医者さんでの優しい歯科治療

小学校の高学年になり、ついに学校歯科検診で虫歯が見つかり、歯医者さんの治療を受ける必要が出てきました。まずは歯医者さんに息子の障害を説明し、受け入れてくれるかどうかを相談しました。

地元の歯医者さんでしたが、障害を理解してくださり、とても親切な対応をしてくれました。はじめのうちは歯科治療ではなく、慣れるまで歯磨きレッスンを行ってくれました。

3~4回にわたる歯磨きのレッスンを受けながら、歯科治療を受けるところは怖くない、口をゆすぐところはここ、歯を見る時は口を大きく開けるなど、徐々に指導してもらいました。

いよいよ次回が治療という時、歯科衛生士さんが自らが書いた手作りの「歯を治療する流れの絵カード」を次の治療までに見ておいてねと渡してくださいました。なんとありがたいことでしょう。息子のために忙しいなか丁寧に書いてくださったのです。

わかりやすく可愛らしい絵と文字で歯科治療の様子を理解した息子は、見事に口を開けることができ、無事に治療を終えることが出来ました。多少大きな声を上げましたが、泣かずに治療を終え、先生をはじめ歯科衛生士の方たち全員に褒められて、ニコニコと嬉しそうな顔をしていました。

大きな声でありがとうと言えた時は思わず涙してしまいました。感謝してもしきれないほどありがたく、嬉しい一日でした。現在でも年に2~3回は定期検診に通い、歯のチェックをしていただいています。

まとめ|時間はかかるけどいつかは出来ます

私の経験からお伝えしたいことは、歯科治療、歯磨きは決して焦らず、長い目で見てあげるということ。そして他の人と比べて叱らないということです。

早く出来たからと言って偉いわけではなく、凄いことではなく、遅いからダメということでもありません。いつかは出来るから大丈夫です。

自閉症の子たちは、親が焦ったりイライラしたりすると、そういったことに特に敏感な子たちなので、歯磨きそのものが嫌なこと、恐怖となってしまう可能性があります。

口で言って伝わりにくい場合は、言われていること、歯磨きする意味自体を理解していない可能性がありますので、我が家のように絵や映像、文字やカードを利用して伝えてみてはいかがでしょうか。

[参考] 監修者メッセージ

従来は、わずかな自閉症の特性が見られる状態から典型的な自閉症までを含めた全体を「広汎性発達障害」と呼んでおり、さらにそれは障害の程度に応じて細かく分類されていました。近年では、そのような分類が廃止され、「自閉症スペクトラム障害(ASD)」とひとくくりに呼ばれるようになりました。ASDの特徴として、言葉などの聴覚情報による理解やコミュニケーションよりも、視覚情報が優位であることが知られています。そのため、絵カードや写真カードによる視覚支援が有効とされています。絵カードや写真カードを使い、ASDの方を取り巻く環境や情報を整理し(構造化)、生活や治療のスケジュールを視覚的に提示して見通しを立てることで、意味を理解することをサポートし、安心させることができます。

[監修歯科医師:黒田 英孝]

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ライターネーム「KIZUNA」
ライターネーム「KIZUNA」
家族と犬が大好き!ひと回り以上年上の旦那と20歳の娘と19歳の広汎性発達障害の息子を持つ元気な主婦。