歯科コラム・体験談

うつ病の患者はどんなときに歯医者へ行きたいと思うのか

精神障害を持っていると「分かりづらい」「理解されにくい」と感じることはありませんか。それは身体のどこかに障害があるわけではなく、心の障害が目に見えないものだからなのだと、どこかで諦めてしまっていませんか。

正直なところ、精神障害者とは付き合いづらいと思います。私を含めて精神障害者は、そのことを知っています。ただ家族から精神障害を理解されないことは、一緒に住んでいるにも関わらず、とても残念に思います。

そんな家族が「口臭が強くなったから」「歯の色が黄ばんできたから」などと思い、精神障害者を歯科へ受診させようとしても、うまくいくはずがありません。

歯科受診をさせたいときは、精神障害のことをしっかり理解することが大切です。精神障害者がどんなときに歯科へ行きたいと思うのか、うつ病と双極性障害を合併しているひとりの患者として、私の経験をもとにご紹介します。

うつ病患者に歯科受診(歯医者)は難しい

がんばって歯医者さんへ行こう。口が臭いし、歯も変色しているから歯医者さんへ行こう。

こんなことを言われても、身体が重くて起きられない、気分がすぐれないから行きたくない、とうつ病患者は思うのです。理由は簡単でうつ病は気分障害だからです。

でも、家族は家に引きこもって欲しくない、学校や会社に行って欲しいと焦ります。これがうつ病患者にとっては重みとなり、さらに動けなくなるのです。

なぜなら、うつ病患者は家族のために動きたいと思っていますが、思い通りにならない自分に対して責任を感じ、いらついてしまうからです。

これが、うつ病患者に「頑張ろう」と言ってはいけない理由です。つまり、「うつ状態」のときに歯科受診を勧めてはいけないのです。

うつ病患者は歯科受診のきっかけが欲しいだけ

うつ病患者は、自分の口臭が酷いことを知っています。口の中がべとべとして不快なのは分かっています。

しかし歯医者へ行きたくないのです。理由は身体が重くて起き上がれないから、気分が落ち込んで、家からで出られないからです。

うつ病患者は歯科受診をすれば、口腔内の不快がなくなることを知っています。元気なときに歯磨きをすると口のなかがスッキリすることを知っているからです。

このようなとき、家族のちょっとした工夫で歯科へ行くことができます。それは「メンタルクリニックの帰りに立ち寄ってもらう」「歯医者さんに往診に来てもらう」などです。

もしかすると、虫歯や歯周病を治すことで気分が良くなる瞬間があるかも知れません。

うつ病を理解してくれる家族が必要

うつ病患者は、自分がうつ病にかかったことへ責任を感じています。いつか気分が良くなったら学校や会社へ行ったり、家族と買い物へ行ったり、旅行をしたいと思っています。

でも、気分が良くないから動けないのです。「頑張って歯医者さんへ行こう」というセリフは、もっと心を重くさせるのです。

現在、国内でうつ病と診断された人は70万人以上います。

うつ病は心の風邪とよく言いますが、風邪なら安静にすれば治ります。しかしうつ病は、良くなったり悪くなったりを繰り返し、風邪のようにはいきません。

うつ病患者がいる家族は、近所の人に分からないようにと言い、差別したり、酷いときはお荷物のように扱ったりすることがあります。

もしうつ病患者に歯科受診をさせたいと思うなら、まず症状の意味を理解し、精神障害に理解のある歯医者さんに相談しましょう。

そうした専門性のある歯医者さんは、どのようにしたらうつ病患者が受診するようになるのか知識を持っています。

だから家族はイライラしたり、無理に歯科受診をさせないようにしましょう。

まとめ|がんばって歯科受診をしないこと

うつ病や双極性障害になった患者として、どのようにしたら歯科に受診できるようになったのか、という私の実体験をもとにお伝えしました。

うつ病患者はうつ病になったことに対して責任を感じています。その家族の気持ちも理解できますが、うつ病患者は周りのみんなに言われることに対して頑張っています。

だから、ご家族も一緒にうつ病患者と治療を頑張ってください。歯医者さんについても、きっと些細なきっかけで歯科受診ができるようになるはずです。

ABOUT ME
ライターネーム「Octobe-13」
外資系製薬企業の開発本部長に若くして昇進したが、深夜と早朝に本国との会議が週2回入って寝れない日が続いた。それと過度のストレスが混ざり、翌年うつ病に罹った。ここから6回の再発と3回の転職を経験。その後、うつ病ではなく双極性障害と診断されたが、現在は再発もなく安定した生活を送っている。また外資系製薬企業に再就職でき、開発部長のポジションで働く傍ら、うつ病などで悩む人たちとその家族のためにメッセージを書き続けている。