コラム・体験談

要介護4になった義母の口腔ケア(歯磨き)で試行錯誤したこと

私は現在、主人と主人の母と同居しています。義母は46歳で脳梗塞を患ってから左半身が麻痺しており、糖尿病と狭心症を合併していました。そのため、要介護認定を受けていました。

そんな義母は、体に麻痺が残っていることや車椅子で生活していることから歯磨きは怠りがちで、糖尿病の口渇からくる口臭もあり、介護をする私はとても気になっていました。

糖尿病に加えて認知症も発症したことで要介護4へ

同居を始めた当時、74歳で要介護2だった義母に、2年ほどすると認知症の症状が出始めました。

何度も転倒を繰り返す日々が続き、要介護4に介護認定が引き上げられました。

要介護4になってから、義母はほとんど自室のベッドで過ごすようになりました。その結果、口腔ケアが疎かになってしまったのです。

ベッドに寝ている義母の口を見ると、着色汚れや虫歯などが素人目にもわかる状態です。糖尿病からくる口臭も日を追うごとにひどくなっていきました。

要介護4になってからより難しくなった義母の口腔ケア

それまでは自分で洗面所に行って歯磨きをすることもできていたのですが、要介護4になってからはそれも難しくなりました。きちんと歯を磨かない義母に対して「ちゃんと歯を磨いてください!」と声を荒げることもありました。

しかし、義母にしてみれば嫁の私に「歯を磨け」と言われるのは癪(しゃく)なのでしょう。私が少し強く言うと、機嫌が悪くなり、ベッドに寝転がって抵抗するのには困ってしまいました。

半身麻痺を抱えた状態で歯を磨き、車椅子で洗面所に行くことには、健康な私たちには想像もできない苦労があることは頭では分かっているつもりです。

できる限り義母の手助けをしたいということも話したのですが、「私だって磨きたくなくて磨かないんじゃない!」と逆に義母を怒らせてしまいました。

薬の副作用などから気軽に歯科を受診できない状態

それからというもの、義母に歯を磨いてほしいと思っていても伝えることができず、日を追うごとに気が滅入っていきました。

ある日、義母が病院に行くタイミングで、通院に付き添っている義姉に「ついでに歯科を受診させてもらえないか」と相談したところ、義姉がその場で予約を取ってくれ、歯科を受診できることになりました。

総合病院の歯科で見てもらったところ、義母は長期間服薬している脳梗塞と心臓病の薬の副作用で、出血すると血が止まりにくい状態でした。そして糖尿病が重度であるために出血口の治癒が遅く、感染して壊死しやすい状態であることを伝えられ、本格的な歯科治療が難しいことが分かりました。

通院の利便性などを考え、近隣の歯科医院や訪問歯科サービスを問い合わせてみました。しかし、車椅子で受診できるバリアフリーの歯科医院が近辺にはありませんでした。また、薬の副作用のリスクから訪問歯科などのサービスも受けられなかったため、気軽に歯科を受診できない環境でした。

こうした状況の中で、私と主人は自宅における義母の口腔ケアをどうすればより良いかたちで行えるかを真剣に考えるようになりました。

口腔ケア改善に向けて空振りに終わった仕上げ磨き

このまま義母の口腔ケアを疎かにしたままで良いはずがありません。そこで、私は夫と相談して「仕上げ磨き」を行ってみることにしました。

歯ブラシや洗面器など、すべてがベッドに寝たまま済ませられるように準備して、さあ仕上げ磨きです。

これで義母の口腔ケアもうまくいくはず!と意気込んで始めてみたのですが、長年口腔ケアが疎かになっていた口の中は少し歯ブラシを当てただけでひどく出血し、隅々まで仕上げ磨きをすることはできませんでした。

また、「仕上げ磨き」という子どもにするようなことを行ったことで、義母のプライドを傷つけてしまったのでしょう・・・2日目になると義母は口を開けてくれませんでした。

義母がどうしたいのか、どうすれば歯磨きできるのか

思い返せば、この「仕上げ磨き作戦」は私たちの完全なエゴでした。

自分たちの「義母に歯を磨かせたい!」「義母の口腔ケアをしっかり行いたい!」という気持ちを義母に押し付けて、義母が「どうしたいのか」「どうすれば歯磨きができるのか」というところに思いが至りませんでした。

自宅でのケアが難しいと分かった私たちは、デイサービスで口腔ケアを行ってもらえないか相談してみました。

しかし、デイサービスには看護師さんや歯科衛生士さんがいないことから、義母のようにリスクの高い利用者の口腔ケアは行えないと言われてしまったのです。

「ご自分で歯磨きを頑張っていただくしかないですね」というデイサービスの方のひと言に、とてもショックを受けました。

洗口液やフロスも上手くいかず近所の歯医者さんに相談

友人から勧められた洗口液や、デンタルフロスなども試してみました。しかし、洗口液は吐き出さずに飲み込んでしまうし、フロスは嫌がり、私たちは途方に暮れてしまいました。

だからといって、何もせずに放っておけば、口の中の環境は悪くなる一方です。藁(わら)にもすがる思いで近所の歯医者さんに相談した結果、私たちは「舌苔(ぜったい)をケアする」という方法にたどり着きました。

舌苔とは舌の表面に付着する白い苔のようなもので、舌苔が溜まると口臭の原因になるそうです。そこで、シリコン製のやわらかい舌ブラシで舌苔のケアを始めてみました。

口臭を軽減させるための「舌ブラシ」による舌苔のケア

「ただ優しく舌をなでるだけで舌の上のゴミや雑菌を取り除くことができるので、何もしないよりも随分スッキリするはずですよ」

歯医者さんに言われた通り、義母の舌を優しく舌ブラシでなでました。最初は仕上げ磨きと思って口を開けてくれなかった義母も、舌ブラシであれば嫌がらずに口を開けてくれるようになりました。

舌ブラシは歯ブラシよりも柔らかいため、口の中を傷つける心配もありません。また、洗口液のように飲み込んでしまう心配もありません。

毎食後に続けることで義母の口の中も少しずつきれいになり、口臭もだいぶ軽減されていきました。

次に歯科医に勧められたのは「フッ素スプレー」

舌ブラシによるケアが習慣になったころ、次に勧められたのは「フッ素スプレー」でした。

歯医者さんに「子ども用の無味無臭のスプレーであれば、ミントの味や香りにむせることなく使うことができますよ」と言われ、早速実践してみました。

口の中に数回スプレーするだけで、かなり口の中がさっぱりするようで、今でも義母も嫌がらずに使ってくれています。

とにかくできる範囲でやっていくこと

ほぼ寝たきりで、認知症も発症している義母の口腔ケアは簡単ではありませんでした。最初は「完璧にやろう」とあれこれ工夫をして、そのたびに失敗して神経をすり減らしていましたが、歯医者さんに「できる範囲で行えば良いんですよ」と言っていただいたことで肩の荷が下りましたように感じます。

もちろん、介護が始まった時から、毎日しっかりと口腔ケアができればそれに越したことはないのですが、完璧でなくてもやらないよりやったほうが良いことは言うまでもありません。かかりつけの歯医者さんで相談するなどして、できる範囲で行っていくことが介護する人、介護される人の双方にとっての有益なことになるのではないでしょうか。

[参考] 監修者メッセージ

認知症の介護で大切なことは、本人の尊厳を尊重することです。認知症の程度にもよりますが、本人でできることは、できるだけ本人にしていただくことが大切です。介護者は本人が苦手なことの手助けをしてあげて、得意なことは積極的に本人に任せます。そうはいっても、口腔ケアが疎かになってはいけません。寝たきりの方は誤嚥性肺炎のリスクが高まります。上述されているように、かかりつけ歯科医や介護専門職の方などに相談し、それぞれの環境にあった介護者の負担にならない方法を探しましょう。また、認知症の介護に関するネットワークがたくさんあります。そういったサービスを利用してみるのも1つかもしれません。

[監修歯科医師:黒田 英孝]

ABOUT ME
ライターネーム「Iseoi」
ライターネーム「Iseoi」
30代の猫好き専業主婦。京都の大学卒業後、20代後半よりうつを患い退職、ひきこもり、父の看病、結婚、出産、義母介護などを経験。時々ライターなど細々と。