歯科コラム・体験談

発達障害(ASD)の私が歯磨きを苦手としている理由

発達障害の当事者の方、ご家族の方で歯磨きに関してお悩みを持っていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。

私自身が発達障害の自閉症スペクトラム(ASD)であり、ASD特有の感覚過敏や、学校で笑われた心的トラウマなどから、歯磨きを幼少期から苦手としていました。でも、今では苦痛な感情を持たずに歯磨きを出来るようになりました。

今回の記事では、
・私が歯磨きに苦手意識を感じていた原因/背景
・苦手なことに対して私と家族が行った対策方法
・苦手なことに対して先生方がしてくださった対策方法
についてお伝えしたいと思います。

具体的にどのような方法で歯磨きに慣れていったのか、どんなアイテムを使って対策をしたのかもお伝えしていくので、参考にしていただけると嬉しいです。

目次

発達障害[ASD]の感覚過敏で歯磨きが苦手に

幼いころは、歯磨きに対して『痛い』というイメージが強く、歯ブラシを持っている母から毎日逃げ回っていました。

【原因】歯磨きが痛かったのは感覚過敏だった

いま振り返ると、私の痛みの原因は、ASD特有の感覚過敏だったと思います。歯ブラシで触れられること自体が、とても辛くて痛みを感じていました。

【対策】刺激に慣れるように母が練習してくれた

母に確認したところ、歯医者さんから刺激になれるように繰り返し練習するようにアドバイスをもらったとのことでした。刺激になれるようにした具体的な方法は次の通りです。

①ガーゼを指に巻いて歯に触られる感覚にならす
②口の中に触れられる感覚に慣れた後に、毛先が柔らかい歯ブラシで歯磨きを行う

私は歯ぐきへの刺激が特に苦手で、歯を磨けるようになっても歯ぐきに歯ブラシが当たるとそれだけで口を開けなくなったらしいのですが、母の地道な努力により、何年かかけて歯磨きに対して抵抗がなくなりました。

歯垢染色による心的トラウマから苦手意識が根付く

また小学生の頃、学校保健での歯垢染色の時間にクラスメイトから笑われたことが心的トラウマになり、一時期ずっと歯磨きが出来なくなりました。

【原因】学校で笑われて苦手意識が根付いた

自分自身はきちんと磨いているつもりでしたが、歯垢染色剤で色がついてしまいました。そして、染色後もうまく落とすことが出来ませんでした。

それを見ていた担任の先生に『いつもどれだけ磨けていないかがわかったね』と言われてしまい、聞いていたクラスメイトに笑われてしまいました。

ちょっとしたことですが、この出来事から、歯磨きを見られるのが嫌で小学校の教室内で歯磨きが出来なくなり、同時に歯磨き自体にも苦手意識を持ってしまいました。

【対策1】自宅や保健室での歯磨きの練習

保健室の先生と相談し、自宅と保健室で毎食後に歯磨きを行い、毎日きちんと磨けているのか朝晩は家族、昼は保健室の先生に確認をしてもらうようにしました。

また、保健室の先生は、歯の模型で苦手としている部分の歯ブラシの当て方を丁寧に教えてくれたので、うまく磨けなかった部分も磨けるようになり、苦手を少しだけ克服することが出来ました。

【対策2】マウスウォッシュ併用による安心感

「磨けてないということは、口臭も大変なことになっているのではないか」と毎日不安で学校に行きづらくなっていた私に、親がマウスウォッシュを用意してくれました。

マウスウォッシュのおかげで、口臭に対しての不安感が消えたことも安心感につながったと思います。

痛みに耐えながら歯磨きを続けた日々もあった

小きざみに歯ブラシを動かすことがうまくできず、成長するにつれ歯磨きの時に力を込めて磨く癖がついてしまいました。

【原因】しっかり磨く意識からの変なこだわり

『小きざみに動かすことができないから、人よりもしっかり磨かなくてはいけない』という意識があり、痛みに耐えながら毎日力強く歯磨きをしていました。

いつしか『歯磨き=歯ブラシは血だらけになる=きちんと磨けている証拠』のような認識から、血がつくまでゴシゴシ磨くことが習慣となっていた時期もありました。

【対策】電動歯ブラシを使うようにしてみた

小刻みに動かして磨くこと、力加減を調節することが難しかった私に、歯医者さんがすすめてくれたのは電動歯ブラシでした。

歯科衛生士の方から電動歯ブラシの使い方や当て方を教えてもらい、慣れるまでに時間はかかりましたが、電動歯ブラシのおかげで優しい力で磨けるようになりました。

まとめ|歯磨きと自閉症スペクトラム(ASD)

苦手だった理由をいま振り返ってみると、感覚過敏のほかにも、自閉症スペクトラム(ASD)特有の考え方が極端であることや不器用さが原因で苦手に繋がったものも多いように感じました。

同じ発達障害というくくりでも、苦手に思っている理由・感じ方は様々だと思います。ASDを持つ私のケースはあくまでも一例にはなりますが、少しでも対策方法のヒントにしていただければ幸いです。最後まで読んでいただきありがとうございました。

自閉症スペクトラム障害(Autism Spectrum Disorder、略称ASD)は、従来からの典型的な自閉症だけでなく、アスペルガー症候群、特定不能の広汎性発達障害、小児期崩壊性障害などを包括した言葉で、知的障害の有無にかかわらず、「社会的コミュニケーションの障害」と「限定された興味」という症状から診断される発達障害のひとつです。

ASDの特徴的な症状の1つに「感覚過敏」があります。定型発達者(健常者)であっても、髪の毛1本あれば違和感・不快感を覚えるほど、口腔内の感覚は鋭敏です。歯みがき一つとっても感覚過敏のあるASDの方にとっては、とてつもない刺激になっていることが考えられます。

本記事では、そんな感覚過敏を持つASDの方がどうやって歯磨きをできるようになったか、たくさんのヒントがありました。ぜひ参考にしてみてください。

[監修歯科医師:黒田英孝]

ABOUT ME
ライターネーム「ワダカモコ」
発達障害(ASD)当事者の大学生ライター。1997年生まれ。幼いころから家族共々、障害特性や感覚過敏に悩んできました。情報を発信して、少しでも同じ障害を持つ方の役に立てたらいいなと思い日々模索中。