コラム・体験談

自閉症スペクトラムの子と向き合ってくれた歯医者さんへの感謝

我が子が自閉症スペクトラム(ASD)(※診断当時は注意欠陥障害(ADD)&アスペルガーという名称でした。)と診断されたのは、小学2年生のとき、お友だちへの暴力がきっかけでした。幼児の頃から兆候はあり、保健所へ相談に行ったことや、保育園に尋ねたこともありました。

「お母さん、心配しすぎですよ。」そんな言葉をいただいて、モヤモヤしながらも安堵してしまっていました。いま思えば、もっと早くに気づいてあげればよかったのにと、自分の不勉強を情けなく思っています。

自閉症スペクトラムと診断される以前の歯医者事情

幼児の頃、歯医者さんで暴れてどうしようもないので、「今日はあきらめましょう」とうながされ出直したことがあります。結局、出直しても暴れるので、母親の私が診察台に子どもと一緒に横になり、羽交い締めのようにして診ていただきました。

うちの子は怖がり、幼児といえど、ものすごい力で暴れました。泣き疲れて眠っている我が子を抱えながら、これがいつまで続くのかと、不安な気持ちで帰路を歩いたのを憶えています。ただ、これが普通だと思っていました。

そんなとき、信頼をおく私自身の歯科医師に相談してみたところ、「連れておいで」と言っていただいたのです。幼児は小児歯科しか受診できないものと思い込んでいたので、普通の歯科医院ですんなり診察してもらえたことに驚きました。

インターネットで小児歯科を調べまくっていたのはなんだったのだろうと拍子抜けもしました。それだけ情報が少なく、私は孤立していたようです。

我が子の手のひらを、先生は器具でちょんちょんと確かめさせるようにつついて触らせ、「これからお口の中見せてね、ムシバイキンがいたらやっつけないといけないから」と説明してくださいました。子はじっと先生を見つめていましたが、しばらくすると自然に口を開き、診察を受けることができたのです。

強制的に身体を押さえつける必要はなく、「これから何をするのか、何のためにするのか」を先生から伝えてもらったことで、信頼関係ができたのだと思いました。

自閉症スペクトラム特有の鈍感さと敏感さへの理解

自閉症スペクトラムの子は、鈍感さと同時に敏感さを持ち合わせていると言われています。

遊ぶことに熱中してしまい怪我をして血を流していることに気づかないという鈍感さがある一方、服の素材(肌触り、密着感)にこだわり、同じ服ばかり着てしまう、他の服が着られないという敏感さを持ち合わせています。

障害のある我が子にとって、口の中というただでさえ敏感な箇所を他人に触れられるのは、健常の人とは比較にならないくらい辛いものなのだと、理解することが大切だったのです。

子の気持ちを否定することなく、一緒になって考えることができたら、そして子の気持ちに寄り添ってくださる歯科医師が見つかれば、強制的に押さえつけるような診察は必要ないのだと信じています。

大切な自尊心を傷つけないよう毎日の歯磨きでの注意

現在小学5年生の我が子ですが、注意をしなければ歯を磨かず不潔にしています。忘れてしまうようです。

毎回注意をするのは疲れますが、「歯磨きしないとだめじゃない!」ではなく、「今日は歯磨きした?」と何気なく聞くように努めています。

本人はあっけらかんとしているように見えて、実際、自分自身を責め続けています。自尊心をこれ以上傷つけてもらいたくないので、気をつけて伝えるようにしています。

そして、歯磨き粉の香りがする我が子には、「いい匂いだね、きれいだね」と声を掛け、歯磨きは心地良いことなのだと、大人になるまでに習慣がつけられたらと、長い目で考えるようにしています。

障害を抱えた子のお母様・お父様は、毎日悩んでばかりではなく、どうか気楽に過ごしていただけたらと祈っています。

個性的な我が子と真摯に向き合ってくれたことへの感謝

歯科医院で、子どもにシールや消しゴムなど、ご褒美をくださるところがあります。喜ぶ子どもも多いと思うのですが、そうしたことに加えて、「自分の歯を大事にすることは良いことなんだよ。歯医者で診察を受けられてえらいね。」と単純に褒めていただけたら、どんなに子どもは嬉しいでしょう。

個性的な我が子と真摯に向き合ってくださった歯科医師の先生には感謝の気持ちでいっぱいです。素敵な先生と出会えたことを大変ありがたく思っています。

[参考] 監修者メッセージ

お読みいただいたとおり、本編に『子どもにシールや消しゴムなど、ご褒美を』や『単純に褒めていただけたら』という内容がありました。これは「オペラント条件付け」や「トークンエコノミー法」といった行動変容法の一種です。行動心理学に基づいた手法で、小児や知的障害のある障害児(者)に、歯科治療に対するやる気を出させるためのとても有効な方法になります。このような技法を上手に取り入れると、日常の生活でもより上手にコミュニケーションが取れるかもしれません。

[監修歯科医師:黒田 英孝]

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ライターネーム「Uenimo」
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我が子が、好きなことを見つけ、目標に向かって充実して過ごしてくれたらと願っています。その手伝いができるよう母親業をがんばっています。