歯科コラム・体験談

【ダウン症】歯科治療時の息子の泣き叫びから決心した歯磨き改善

私の息子は現在小学2年生、8歳のダウン症です。療育手帳(知的障害)では重度の認定を受けています。

生まれつき心臓に中隔欠損症(心臓の壁に穴がある疾患)がありました。幸い手術が必要な程度ではなく、成長とともに徐々に穴はふさがってきています。

それでも、心臓にリスクがあるということで、口の中は常に清潔にしておいてくださいと、療育の先生や歯科医、歯科衛生士からずっと言われ続けていました。

ですので、歯が生え始めた生後1年くらいから、半年ごとに歯科医院に通院していました。歯磨きにも慣れるようにと、早いうちから歯ブラシを用意して、遊びの延長として考えられるようにと考えてみたり・・・。

それでも、年齢が上がってくるにつれて、歯磨きを嫌うようになってしまいました。毎日の歯磨きでは逃げ回られ、親の方が神経質になってしまうという状態でした。

【ダウン症の息子】泣き叫ぶ中での歯科治療

そんな中、ある日の歯科検診で虫歯が見つかり、治療することになりました。ネットでベッドに固定され、全身汗だく、声が枯れるほど泣き叫ぶ中で治療が行われました。

もちろん、安全が最優先なのは理解しています。動いてしまうと逆に危険です。固定されることや、泣いて嫌がっても治療しなければ、もっと虫歯がひどくなるだけということも十分に理解しています。本人も治療が終わった後は、ケロっとしていました。

それでも、治療中の姿はどうにも受け入れがたいものがありました。

親として息子の虫歯をどうにかして予防したい

虫歯ができてしまうと、このような治療を受けざるを得ない。となると、親の私にできることは、どうにかして虫歯を予防するということ。

食生活では、甘いお菓子を極力控えることはもちろんのこと、ジュースの回数も減らし、水を飲ませる練習をはじめました。

息子は、コップから飲み物を飲むことが苦手でした。コップの練習をするのにジュースを使っていたため、ジュースのくせがついてしまっていたのです。

とにかくできることをできる限りやってみる

通常の歯ブラシでブラッシングしたあと、歯ブラシの先端の毛だけを1列残した歯ブラシを使って奥歯を磨くといいですよ、と歯科衛生士の方から言われました。

さらに、歯並びが悪い息子には、糸ようじ(デンタルフロス)までできるといいのですが、とも言われましたが、そんなことはとても無理な話です。

毎日2回、逃げる息子に半ば強制的に歯磨きをしている中で、あれこれ歯ブラシを替えるとか、糸ようじをするなんて、考えるだけでぐったりです。

うがいもできず、うがいをした後の水は必ず飲みこんでしまう息子には、歯磨き粉も使うことができません。それでも虫歯は阻止したい。

とにかくできることを、できる限りやってみることにしました。どんなに嫌がっていても、「今日は歯磨きはなしでいい」という日はつくりませんでした。

朝と晩の歯磨きは、いくら抵抗されても最後までやり抜きました。余裕がある時(それは大抵本人が眠くてどうしようもない時)は、丁寧にブラッシングをしました。

電動歯ブラシで歯磨きを根本的に改善してみた

虫歯ができてからは、歯科医院通いも2-3か月に1度となり、歯科医院での診察や磨いてもらう機会も増えました。

残念ながら、家での頑張りはあまり効果がみられなかったようです。歯についている汚れはあまり取れておらず、いつも「もっと磨いてください」と言われて帰ってくる始末でした。

そこで、息子の歯磨きには根本的な改善が必要だと考え、電動歯ブラシを試してみることにしました。

しかし、果たして口の中に入れてくれるものなのか、全く想像できませんでした。そのため、まず先に、親や兄弟が楽しそうに使ってみせることから始めました。

息子はだんだんと興味を持ち始め、やりたがった時がチャンスでした。初めての感覚に顔をしかめていましたが、初回はごく短時間で終わらせ、「できたね!」とちょっとオーバーに褒めました。

これを毎日続け、だんだんと時間を延ばし、まるで面白いイベントのようなものにしていきました。

息子のペースをみながらゆっくり取り組む

効果はてきめんでした。歯科医院に行くと驚かれました。今までべったりとこびりついていた汚れが落ちていると。

電動歯ブラシのいいところは、手用で磨くのと比較すると短時間で終わるところです。機種によってはタイマーで刷掃時間の目安を教えてくれるので、息子にも終わりがわかりやすいらしく、そんなに「面白いイベント」ではなくなった今でも、タイマーが鳴るまでの間はおとなしくしていてくれるようになりました。

今では、息子も成長してきたせいか、ルーティンを覚えたのか、朝と晩の歯磨きが終わらないと次の行動に移りません。

さあ、次の目標は糸ようじ(デンタルフロス)です。息子のペースをみながら、ゆっくりと取り組んでいきたいと思っています。

精神遅滞(知的障害)のある児たちに、何かを覚えてもらう、トレーニング(脱感作)するポイントの一つに、「見通しをたてる」ことがあります。「10数える間がんばって口をあけよう」といったよく歯医者さんで聞くフレーズも、この手法の一つです。そういった意味では、コラムにあったタイマー付きの電動歯ブラシを使ったのは、歯磨きを成功に導いた要因の一つかもしれません。簡単なストップウォッチ等でも応用できます。

[監修歯科医師:黒田 英孝]

ABOUT ME
ライターネーム「Isae」
小学2年生のダウン症の息子を持つ母。なかなか言葉の数が増えず、コミュニケーションをとるのに苦労しています。健康面でもサポートすることは多く、心配は尽きません。他方、過保護になるのも本人の自立を阻むため、バランスを取るのは難しいと感じています。