私は3年前に社会不安障害(Social Anxiety Disorder、略称SAD)を発症し、今もこの病気と戦い続けています。
発症した当初は、自分でも病気であることには気付かず、気持ちの問題だろうと無理をしていた自分がいました。そんな中、SADと同時にうつ病を併発してしまい、精神科に受診することになったことから、自分がSADであるということに気づきました。
このSADを簡単に説明するとともに、私自身の歯磨きや歯科受診の体験談についてご紹介したいと思います。
社会不安障害(SAD)とは
SADは、ある特定の場面や人前で何かをするときに、異常なほどの緊張感の高まりによって、不安や恐怖を人一倍感じてしまう病気です。そのまま放置しておくと、次第にそのような場面を避けるようになり、症状は悪化していく一方となります。
日常生活において、緊張は誰にでもあることですが、ほとんどは経験を積むことで自然に振る舞えるようになるものです。しかし、このSADの場合は、自分でも不合理だと思っているのにも関わらず、症状は悪化の一途をたどってしまうものになります。
【社会不安障害(SAD)の症状例】
・対人恐怖症…周囲の視線が気になり、強い不安や恐怖を感じる。手足・声の震えや動悸、発汗などさまざまな身体症状も現れる。
・場面恐怖症…緊張して声が震えるなど、人前でうまく発言できなくなる。
・赤面恐怖症…人前にでると緊張感が高まるとともに顔が赤くなる。
・書痙(しょけい)…人前で文字を書こうとすると、緊張と不安から手が震えてしまう。
このようにSADにはさまざまな症状がありますが、私の場合には「対人」と「場面」の2つに限って不安や恐怖、緊張を感じていました。
では、実際にSADとなってしまった私の歯磨きや歯科受診について次にご紹介していきます。
SADになった私の歯磨き方法
私の場合、症状が出てしまうのは人前に限ってのことなので、日常の歯磨きにはほぼ支障はきたしません。
SADと診断されるまでは、私は会社勤めをしていて、毎日かなりのストレスを抱え込んでいました。そのため、帰宅後の生活はかなり荒れてしまい、歯磨きをする余裕すらありませんでした。
現在は、在宅での仕事に切り替えたので、毎日の歯磨きは欠かさず行うことができています。また、さまざまなストレスから解放されたおかげで、歯磨きのみならず色々なことに時間を費やせるようにもなりました。
もし、同じSADで毎日が苦痛でならないといった方は、私のように転職すること(在宅)もひとつの方法かもしれません。
ストレスをあまり溜めこみ過ぎると、SADが悪化するだけでなく、歯磨きなどの一般的な日常生活にも支障をきたす可能性があるので注意が必要です。
SADになった私の歯科受診対策
前述のとおり、以前の日常生活は荒れ果てており、歯磨きもろくに行わなかったためか、親知らずに虫歯ができてしまいました。そこで歯科受診を決意したのですが、SADのために自分の症状を上手く伝えられるかどうか、大きな不安を感じていました。
最初の電話予約ですら、緊張のため声が震えてしまいましたが、なんとか親知らずの治療がしたいと伝えることができました。私が受診した歯科医院には、ネット予約がありませんでした。電話で緊張してしまう方などはネット予約ができる歯科医院も選択肢の一つかもしれません。
実際の歯科受診では、受付や診断の際にはかなり緊張しました。手や脇などにかなりの汗をかいてしまい、恥ずかしかったことを今でも覚えています。先生やスタッフの方は、私の緊張を察してくれたのか、「緊張しなくて大丈夫ですからね。」と声をかけてくれました。
私は、自身のSADのことを知らせていたわけではないのですが、このような声掛けはとてもありがたく感じました。親知らずを抜歯してもらって、その日は無事に終了。診察室は個室で先生とスタッフの方のみだったので、あまり緊張せずにすみました。
まとめ
社会不安障害(SAD)は、重度なほど日常生活に支障をきたすことが多くなってきます。そんな時でも毎日の歯磨きをしっかりと行うことはとても重要です。
もし虫歯や親知らずなどでやむを得ず歯科受診をしなければならない時が来たら、なるべくSADの症状が出にくい病院を選んでみてください。待合室から診察室まで完全個室の歯科医院もあるようなので、SADの方にはおすすめだと思います。
私の場合には、SAD特有の恥ずかしいといった思いが強かったので、病気を伝えることはしませんでしたが、あまりにも症状がひどい方は予約の時に病名などを伝えてみても良いかもしれません。
社会不安障害(SAD)は、社交不安障害や社会恐怖などとも呼ばれ、基本的には同義として用いられています。SADの方が歯科医院へ受診する一歩目を踏み出す作業は、とても勇気がいることです。しかし、いったん虫歯や歯周病になると、治療しなければお口の中はどんどん悪くなっていきます。この先生なら診てもらえる、この先生なら口を開けてもいい、ここなら続けて通うことができる、という歯科医院をあきらめずに見つけて、かかりつけの診療所にしましょう。そして、定期的に歯科受診を行い、メインテナンスをしていけると良いでしょう。
[監修歯科医師:黒田英孝]