障害者歯科を知る

発達障害児が歯医者でパニックを起こさないために【当日対応編】

発達障害の1つである自閉症スペクトラム障害(ASD)で支援が必要なお子さんが歯科医院に行くための事前準備はとても重要です。しかし準備は万全であっても、いざ当日に歯医者で治療を始めると、パニックを起こしてしまう子はたくさんいます。

子どもが歯科治療中にパニックを起こしてしまったら、口の中を傷つけてしまう可能性だってありますし、間違えば大怪我をする可能性だってあります。だからこそ、大人が見通しを立てて手助けしてあげる必要があります。

可能なかぎり、安心・安全な治療ができるように、治療に入る前に歯医者で大人(お母さん、お父さん)が取ってあげられる対応を知っておきましょう。

【当日対応1】歯医者の待合室では今までの復習をする

歯科医院に着いて、受付をして、すぐに呼ばれるということはほとんどありませんよね。その時間を有効的に使うことで、少しでもパニックを起こさないようにしてあげることができます。

  • 事前に読んであげた本を、再度読んであげる
  • これからの流れについて説明する

「歯医者さんはこんなことをするんだよ」といった、事前の説明で使った本や物があれば、再度読んであげたり、使ってあげたりするようにしましょう。

そして本を読みながら、これからどんなことをするのか説明し、見通しを立てさせてあげます。治療の際に、本の中と同じ物が存在していたら、指さしでどれがどれかということを教えてあげることも大切です。

事前の見通しが実際と違わないように、可能であれば、事前に歯科医師や歯科衛生士に治療手順を聞いておくと、さらに良いと思います。

【当日対応2】まずはお母さんが診察台に座ってみせる

それでは、いざ、診察室に入ってからの行動を説明していきます。

定型発達児であれば、いきなり診察台に座ることも可能かもしれません。しかし、ASDのお子さんの場合は、まずは、お母さん(お父さん)が診察台に座り、お手本を示す必要があります。

そして、今から治療で使う器具を模倣して使い、お口の中に入れて治療をする姿をお子さんに見せてあげるのです。

大人であっても、知らない人からいきなり口の中に何かを入れられたら、不安だし恐怖を感じますよね。

ASDのお子さんは、歯科医院にきているからといって、必ずしも歯科医が口の中を治療するという認識にはなりません。あくまで、知らない人が、口の中に異物を入れる感覚になるのです。

だからこそ、絶対にお母さんが一度お手本を見せて安心させてあげる必要があります。

その時のお子さんの立ち位置は、他の椅子の上だってお母さんのお腹の上だってどこだってかまいません。お子さんが安心する場所にいさせて見せてあげてください。

【当日対応3】歯科治療は膝の上でやってあげる

お子さんも見通しを立てることができ、診察台に乗れると判断された時は、一人で無理に座らせるのではなく、お母さんの膝の上に座らせるようにしましょう。

パニックを起こしてしまった場合、お母さんの膝の上にいることで、押さえつけるのではなく、包みこんであげることができます。押さえつけられると、誰だってよりパニックになってしまいますよね。

まとめ|ASDの子どもが安心して治療を受けるために

ASDのお子さんに対する支援は簡単ではありません。周りに迷惑を掛けてしまったり、繰り返し同じことを説明してあげないといけなかったりします。

お母さん方の中には、それが苦痛になり歯医者に通わないという選択をとってしまう方もいらっしゃるかもしれません。しかし、周りの人たちが適切な対応を取ることで、少しでも歯科治療に前向きにさせてあげることができます。

大切なのは、最初の手助けやケアだけです。歯医者を嫌いになる前に対処すれば、支援が必要な場合であっても、歯医者が好きで行くのを楽しみにしているお子さんもいます。

初めての歯科受診は本当に大変かもしれません。ですが、ちょっとした工夫で、歯医者嫌いから歯医者好きに変えてあげることができます。

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※当記事に関するご質問等は「障害者歯科ネットのお問い合わせページ」よりお問い合わせください。

ABOUT ME
心理士|瀧本彩香
鹿児島県出水市立西出水小学校に相談員として勤務しています。不登校になる児童の中には発達的に支援が必要な児童が多くいます。学校だけでなく様々な場面で、支援するポイントをお伝えできれば幸いです。