歯科コラム・体験談

ADHDの息子が歯科治療をスムーズに行うために

注意欠陥多動性障害(ADHD)及び重度知的障害を持つ息子(現在、小学6年生)は、食べること、甘いお菓子が大好きです。

これまで虫歯になったことはなく、直近における歯科治療の必要性は少ないものの、よく噛んで食べることを理解できておらず、親の指示がなければ歯みがきをしようともしませんし、歯ブラシをかんでしまって充分にみがくことができない時も多くあります。

そうしたことから、予防するだけでなく、将来的に虫歯などの口腔トラブルが息子に起こったときに歯科治療をスムーズに受けられるよう、親子で今から歯科治療(歯医者さん)に慣らすための準備を進めています。

今回はそんな息子と私が歯科受診をあきらめそうになりながらも、理解ある歯医者さんとの出会いから歯科に慣れていった過程を振り返り、これまでの自分たちなりの経験をお伝えできればと思います。

ADHDの息子と将来の歯科治療に向けて

初めての場所に不安を感じ、予防接種などの嫌な体験をしてしまうと、次回からの受診では極度の緊張と拒否をしがちな息子に対して、歯医者という場所に慣れさせ、将来的に治療が必要になった時に少しでもスムーズに受診できるようにするためでもあります。

小学1年生の時のことです。仕上げみがきをとても嫌がって逃げるので、当時はまったくと言っていいぐらいみがけずにいました。こども向けのDVDや絵本を見せて「歯みがきしようね」など、いろいろ試してみましたが効果はありませんでした。

そこで、卒園した児童発達支援センターの園医の歯科に、こどもの障害や今の状況を伝えて歯科受診の予約を入れてみました。

数人で押さえて歯をチェックするのは予測していましたが、怖くて泣き叫ぶ息子に対して「撮れる状況にないから…」と断っても、レントゲンを無理やり撮ることを止めてくれませんでした。

多動の息子と仕上げみがきの日々からの転機

その後の数ヶ月は歯科受診をあきらめて、多動の息子になんとか仕上げみがきをする日々が続きました。そして他県への引っ越しを機に、障害の経過を診てもらうために転院した病院で相談したところ、院内の歯科を紹介していただけました。

この歯科ではブラッシング指導のために歯ブラシを持参するので、受付をしたら歯ブラシを見せるか持たせて、これから歯科受診だという見通しを持たせることにしました。診察台に座る、歯のチェック、と徐々に慣れさせていきました。

現在でもかなりの抵抗をしますが、歯科衛生士の次に担当歯科医が診ないと終わらないことを息子が理解してからは、診察台に向かう途中で先生のところに行き、早く診てほしいとお願いしています。それを理解してくださる先生なのでありがたいです。

虫歯なく過ごすために出来る限り予防に努める

一度、抜けそうで抜けない乳歯の抜歯をしたことがありました。その次の受診は診察台に座れないどころか、入室もできないのではないかと心配しましたが、歯ブラシを見せて、いつもよりも強ばった表情で呼ばれるのを待ち、診察台に座って診察を受けた時には本人の成長を感じました。

抜歯から約2年たちますが、自宅を出る前に歯科受診を伝えると、頭の中が恐怖や不安でいっぱいになるので、病院内の歯科に着いてから歯ブラシを見せたほうが息子には良いようです。

今まで処置中は数人で身体を押さえていましたが、体が大きくなり力が付いてきて治療がうまく進まないことが出てきたため、拘束具の使用を提案されました。体が包まれることで落ち着くかもしれないとのことでした。

抑えるものがなくて受診できるのが一番かもしれませんが、安全面を考えると試してみても良いのではないかと思っています。

食べることが大好きな息子は今まで虫歯になったことがありません。このまま虫歯や口腔内のトラブルなくすごせるように、これからも予防に努めたいと思います。

注意欠陥多動性障害(ADHD)とは、年齢不相応の多動性や不注意、衝動性を主症状とした発達障害で、学習障害(LD)や軽度知的障害(精神遅滞)と合併することがしばしばあります。学習障害は、全般的な知的発達に遅れはないが、聞く、話す、書く、計算する、推論する能力のうち、特定の能力の習得が難しいといった発達障害です。

本編に「診察台に座る、歯のチェック、と徐々に慣れさせていきました。」という内容がありました。これは「系統的脱感作法」といって、不安や恐怖の原因となる刺激を徐々に上げながら体験していって、最終的には目的とする行動がとれるようになるという行動療法(行動変容法)の1つです。障害者歯科や小児歯科を専門にしている歯科医院の多くは、これらの技法を上手に取り入れて、歯科治療を受容してもらえるようにトレーニングをしながら治療を進めていきます。

監修歯科医師:黒田 英孝

ABOUT ME
ライターネーム「Rika」
知的障害、注意欠陥多動性障害をもつ小学6年生の母です。本人は具合が悪いことを伝えることができないため、健康管理は大変です。将来、本人が何かやりがいを持ち、毎日を生き生きと過ごせる人になってほしいと願っています。