私は脳性麻痺を抱えています。脳性麻痺は突発的なコントロールがしにくい障害です。
私は何かをしようと思う時、突然に緊張が走り、身体を上手くコントロールできず、何をするにも時間がかかってしまいます。相手から話しかけられた時でも、身体のどこかが緊張してしまいます。話しかけられるとビックリして、自然と緊張が出てしまうからです。
※脳性麻痺といっても、普通に生活ができる方がいたり、障害が重くて困難されている方がいたりします。また様々な脳性麻痺の症状がありますので、私自身の体験談として、以下をご覧いただけますと幸いです。
脳性麻痺の私がやっている歯磨きの仕方
私の場合は、手を口に持っていくことが困難です。そのため、洗面台に向かって前かがみになり、洗面台に手をのせて固定し、歯ブラシを口にくわえ、手首と口を使いながら、歯ブラシを軽く噛んで、頭を回して歯磨きをしています。
一般的な歯磨きのやり方とは逆の発想で「手を固定して、顔を動かす」イメージです。
うがいする時は、自宅の洗面台の蛇口が回転するので、それを上向きにしてコップは使わずにうがいしています。そのようにできない方は、「ストロー」を使ってみることも一つの手段だと思います。ストローでうがいをする時は、できる人はストローを唇で軽くはさみ、口に水がたまるのを待って、その後にストローを離してうがいをすると、うがいがしやすくなります。
ストローを使うにあたって気を付けてほしいことがあります。口の奥まで入れてしまうと、ムセてしまいます。使用している歯ブラシは電動と手動の2通りありますが、おそらく多くの脳性麻痺の人たちは、電動は使わないのではないでしょうか。その理由は歯ブラシを噛んでしまうからです。一般的には便利で良いものであっても、脳性麻痺の人たちには使いづらいことがあります。
緊張があっても安心して歯科治療を受けるために
私は長年かかりつけの歯科にかかっています。私のかかりつけの先生は、脳性麻痺の歯科を担当するのは私が初めてだったようで、特性を把握するのに困難したと話されていました。実は、私も同じで不安や恐怖があったのを覚えています。
2~3回通うようになり「緊張があるけど、顔は動かないし口も開けていられるから、手とか身体の押さえは必要ない」と言ってくれました。いま気づけば定期検診に7年ほど通っています。
脳性麻痺による緊張は、突発的に出てしまいます。本人は気にしていませんが、治療を担当する人たちは、少し驚くかもしれません。通院し続けていくうちに慣れてくると思います。私にとって歯科医院の診察台は特別で、慣れるまでに時間がかかります。席の周りに手すりみたいな掴むものがあるだけで安心感があります。
脳性麻痺の症状は、人それぞれ違います。私の場合は、腕を伸ばした状態で手すりなどを掴めると安心できます。補助の方に手を握ってもらえると安心する人もいれば、私のように余計に緊張感が出てしまう人もいます。かかりつけ歯科医の先生が席の横に手すりをつけてくれたため、今では安心感が生まれて診察/治療を受けることに専念できています。また、こうしたことに人と人とのつながりがあると感じます。
小さいお子さんの歯磨きと歯科治療のお話
余談ではありますが、脳性麻痺の小さいお子さんと歯について少しお話したいと思います。
毎日の歯磨きについては、お子さんの場合は磨いてもらうことが多いと思います。笑うとお口が開くので、その時に、一気にブラシを入れて磨いてあげてください。歯ブラシを噛んでしまった場合は、笑わせるのも一つの手かなと思います。
歯科治療については、小さなお子さんはかなり緊張が激しくなると思います。お子さんの場合「お口をあけて」とか「今からやるよ」と言うと、かなりの緊張が走るものです。私の経験にもとづくアプローチを簡単にお伝えさせていただきます。
- はじめの挨拶は1回(こんにちは。○○君/○○ちゃん/○○さん)
- 診察台に座ってもらったら、深呼吸をしてもらう
- その深呼吸を治療が終わるまで何回か行う
- ぬいぐるみ等を使って遠くを見てもらう
- どうにかして笑ってもらう
- 笑ってもらったら、心の中で今のうちと思い治療する
- ③④⑤⑥の繰り返し
お子さんの場合は口が開いた状態を保持するための器具(開口器やバイトブロック)があるので、治療に際して歯科医院に準備してもらうといいかもしれないですね。
[まとめ] 脳性麻痺の障害とさまざまな困難
脳性麻痺の歯科治療には課題がたくさんあると思います。それをどうやって乗り越えるかは、歯科医師と患者の双方の課題だと思います。
私たち、脳性麻痺の障害を持つ人が様々な面で困難を抱えていることについて、歯科医師をはじめとする支援者の方々、福祉関係の方々にご理解いただけますと幸いです。
脳性麻痺の障害を持つ人々への歯科医療が今より良くなっていくこと心より望んでいます。