歯科コラム・体験談

双極性障害の私が歯科医院に通って自信を持てるようになった話

私は20代の後半の時に、職場でイジメや集団無視、パワハラ、セクハラを受け続け、ついにうつ病になってしまいました。

心身ともに悲鳴をあげていたにも関わらず、「辞めることは逃げることだ」と考えていたので、限界まで頑張り過ぎてしまったのです。初めて精神科を受診した時には「もう少し早く来てくれればよかったのに・・・。」と医師に言われてしまいました。

あれから20年。現在は病状が移行し、「双極性障害(躁うつ病)」と診断され、心療内科への通院を続けています。まだまだ精神疾患を持つ人に対して「差別」と「偏見」が多い日本。精神疾患を持つ人は、ただでさえ辛いのに、世間から差別され、堂々と自分の病気を公表できない苦しさもあります。

精神疾患を患っているということは、普通の、障害がない人に対しての劣等感や、家族に対する負い目、社会生活に対する自信のなさとも共存していかなければいけないということです。

「自分は障害者なんだ。」と認識することは、非常に厳しいことです。そんな私が、元気付けられ自信を持てるようになった歯科通院の話をお伝えできればと思います。

うつ病/双極性障害の症状と人に理解されない苦しみ

病気の辛さは、結局のところ、本人にしか分からないものだと思います。ましてや、精神疾患の場合は、出血もないし、目に見える傷もないので、周りの人から分かりにくく、「甘え」だと捉えられてしまうこともあります。

分かち合える人も機会も少ないため、孤独に陥りやすくなります。とても残念です。スポーツや趣味で、つらい症状を発散できれば理想的なのですが、心身の調子が悪く、身体が動かないと、そうもいきません。

私も例外ではなく、うつ病の症状と人に理解されない苦しみに、長いこと闘ってきました。耐えているものには、必ず拮抗する力が必要です。私の場合は、暴飲暴食と煙草でした。

お酒は飲まないので暴飲とは言わないかもしれませんが、ストレスを感じた時には、大量に甘いものを食べてしまったり、スナック菓子が止まらなかったりしました。

煙草は、20年前にうつ病を発症した時から、ヘビースモーカーでした。イライラしては煙草を吸い、何か出来たらホッとして煙草を吸い・・・どんどん本数も増えていきました。

歯に付くヤニや汚れが嫌で、人前で笑う時に気になったり、自分が煙草臭いのも、煙草がないといられない依存状態も嫌でしたが、どうしてもやめることが出来ずにいました。

尊敬できる歯科医師からの普通の人を見る眼差し

比較的、体調が落ち着いている頃、せっかく両親が歯科矯正をさせてくれた歯を綺麗にしたいと思い、近所にできた新しい歯科医院に「歯のクリーニング」をお願いにいきました。

医療機関では、時に残念ながら、精神疾患を持つ患者に対して、心のない言葉を聞かされることがあります。「今回も何を言われても仕方がない。」そう覚悟して受診しました。

「よしっ!やろう!!」と大きな低い声で現れたのは中年男性の院長先生でした。院長先生からは自信と勢いがみなぎっていました。

診察は検診から徹底的に始まりました。虫歯も発見され、治療することに。先生は、何でもとても分かりやすく説明して下さいました。

「うちはさ~、痛いの可哀想だから、削る時、点滴で麻酔をかけるの(参考:静脈内鎮静法について。双極性の人が飲んでる薬でね、稀に気分が悪くなる人がいるの。だから当日もし具合が悪かったらキャンセルしてね。」と、サラッとおっしゃいました。

院長先生の私を見る眼差しも、ごくごく普通の人を見る眼差しでした。精神疾患を持つ人にとって「普通の人と同じ様に扱われる」ということが、どんなに嬉しいことか。

また、ある時は、歯のクリーニングの最中で、「あなた、もう来ないで。ここで綺麗にしてもらえると思ったら甘えるでしょう?自分で歯磨き、徹底して!」とも言われました。

変な言い方ですが、歯科医院だって商売のはずです。「うちは必要のないことは、やんないから!」そう言い切る院長先生の姿勢には、すがすがしいものを感じ、背筋が伸びました。

「この先生は凄い!通いたい!!」尊敬の念が、通院するたびに募りました。歯のクリーニングの終盤で「あなた、どうしても煙草がやめられなかったら、電子煙草にしてみたら?ヤニの付き方が全然違うから。」と言われました。

電子煙草には抵抗がありましたが、先生がそう言うなら・・・と考えながら帰りました。

私も普通の人みたいに頑張れるんだという喜び

歯にヤニが付くのも嫌でしたが、それより、「あの先生に褒められたい!!」という気持ちで電子煙草のキットを購入しました。

使い方は難しいし、紙巻き煙草の様な吸い心地はありません。ハッカの香りの空気を吸っているような軽い味にイライラが昂じて、数日間はかなりキツかったものです。数日後、やっと電子煙草にも慣れ、そして次のアポイントの日がやってきました。

先生は、すぐに気が付いて下さいました。大きな低い声で「偉い!よくやった!!」と真顔で言って下さいました。頑張ったことを尊敬する先生に認められて、とても嬉しかったのを覚えています。「一生、自分の歯で食べたいじゃない?頑張ろう!!」と言われました。

「あなたは、頑張ったらいけない」と言われ続けてきた私が、「頑張ろう!!」と言われて、私も普通の人みたいに頑張れるんだ!と、この上ない喜びを感じました。

「あなた矯正しているじゃない。その時、歯茎まで徹底的に磨いていたでしょう?だから今でも歯茎が丈夫なのよ。針刺しても血が出てこないからね。このまま徹底してちょうだい!!」と言われたのも、とても嬉しかったです。

自分がやってきたことや、努力が認めてもらえて、自信がつきました。歯科医の先生の真意の程は分かりませんが、私はその歯科通院によって自信をもらえました。

自信が持てれば、毎日の歯磨きも続けられる

本当に好きなことや、自信があるものって人間は頑張れると思うんです。以降、普通の煙草に戻ることもなく、毎日、歯磨きも徹底しています。(本当は電子煙草もやめれば一番良いのですが・・・)

その歯科医院で勧められた特殊な形のデンタルフロスも使っています。もう、自分の煙草の匂いを気にする割合も減り、歯のヤニも少なくなって、人前で自然に笑えるようになりました。

ひどく疲れてしまって、お風呂に入れない日も「歯だけは磨いて寝よう!」と思います。どうしても、どうしても歯磨きも出来ない日は、マウスウォッシュでよく口内を綺麗にします。

精神疾患のある私が、ここまで出来るようになれたのも、歯科矯正をさせてくれた両親と、自信をくれた、その歯科医の先生のおかげです。

自分に合う歯科医院の先生を見つけることが大事

精神科、心療内科をはじめ、私はたくさんの病院にかかったことがあります。それらを通じて「自分に合った先生、合わない先生がいる」ということを実感しました。良い悪いではなく、自分に合う先生、合わない先生がいるということです。

私の場合は、性格的に「なにくそ!」と思って頑張るところがあるので、歯科医の先生に、「あなた甘えるから、もう来ないで!」「歯磨き、徹底して!」と厳しくされたことが、逆に心地良く感じました。

そして何より、私が双極性障害だと知りながらも、普通にサラッと接して下さったこと、努力したことに対して褒めて下さったことが本当に嬉しかったです。歯の治療を受けながら、気持ちまで癒されました。これからも、ずっと通い続けたいと思っています。

敢えて具体的に記しませんが、色々な病院に行ってきた中には、ビックリするようなことを言われてしまうこともありました。どこかが不調で辛くて病院に行ったのに、精神的に落ち込んでしまったことも・・・私だけでなく、多くの方も経験があると思います。

そんな時は、嫌な気持ちは、なるべく忘れて、他の病院を探す方が良いと思います。世の中にはこれだけたくさんの病院があるのですから、自分に合った、気持ちよく治療が受けられる医院があるはずだからです。

この記事を読んで下さった方が、少しでもストレスのない治療が受けられれば・・・と切に願います。

ABOUT ME
ライターネーム「ココミルキー」
双極性障害ながら、自宅の一室でリンパドレナージュとエステサロンを経営しております。「やれるからやった」ではなく「やったからできた」だと思っています。気持ちの浮き沈みは苦しいけれど、日々の生活の中でこまやかな楽しみや幸せを見つけながら、丁寧に生きています。