歯科コラム・体験談

統合失調症の私がアカシジアで辛かった時の歯科治療

私は、統合失調症を発症してから9年になります。統合失調症は、向精神薬(抗精神病薬)を服用します。しかし、その副作用である「アカシジア」という症状の辛さに大変苦しむことがあります。アカシジアは「静座不能症」と訳し、身体がソワソワしてじっとしていられない状態のことをいいます。

今回は、統合失調症の向精神薬による副作用「アカシジア」の辛さにふれながら、アカシジアを抱えながらの歯科治療で大変だったこと、例えば「歯医者さんではじっと静かにしている必要があるが、アカシジアによって長く座っていることが困難である」というような状態について振り返っていきます。

目次

統合失調症|アカシジアという副作用の辛さ

このアカシジアという副作用の辛さは、物凄いものです。得体の知れない焦燥感が体の中から来て、何か動いていないと気が狂ってしまいそうなほど、体がむずがゆい感覚に襲われます。

急性期のころは、あまりの辛さに耐えきれませんでした。腹筋や腕立て伏せ、スクワットなどの運動をしていれば、多少は落ち着くのではないだろうかと思い、動いてみるものの全く落ち着くことはなく、本当にしんどい毎日が続いていました。

家中を徘徊し、転げ回り、何とか気を紛らわそうと必死でした。毎日毎日、焦燥感に耐えるのはとても苦痛でしたし、夜になってもベッドでじっとしていることができず、本当に辛かったのです。

寝返りを何度も打って、ひたすら身体を動かして不安に耐えようとしていました。あまりの苦しみに「身体なんか、なくなってしまえばいい」と考え、夜中に家から飛び出し、警察に保護されたこともあります。

アカシジアを抱えたままの歯科治療で大変だったこと

私は向精神薬を長年服用しており、その副作用であるアカシジアが発症していたため、じっと座っていたり寝転がっていたりすると、体がそわそわしたり、イライラしたりします。いろんな違和感で、動かずにはいられなくなってしまうのです。

自分で歯を磨いたり、お風呂に入ることは出来るのですが、ある日を境に急激に歯が痛み出したので、急いで最寄りの歯科へ通うことにしました。

診断の結果は、虫歯ではなく親知らずが原因だったようで、すぐ抜くことを歯科医師に提案されました。そこで親知らずの抜歯を受けることにしました。

案の定、アカシジアのために長時間椅子に座っていることがとても苦痛でした。

なんとか治療を終えましたが、その後の治療でも「安静にしていなければいけない」「アカシジアでじっとしていることが辛い」という矛盾した2つの状況に、大変苦しみました。

精神疾患の方は歯科治療のタイミングに注意すべき

私の場合、長期間の内服治療の末、統合失調症、パニック障害の波の振り幅が少し小さくなり、薬の量を調整することができたおかけで、アカシジアはだいぶ良くなりました。

今になって冷静に当時の状況を振り返ると、「精神疾患の急性期において、歯科医・精神科医にじっくりと相談もせず、自分の判断で安易に複数の治療を受けるべきではなかった」と思っております。

アカシジアもずっと続く症状ではないため、きちんと医師の治療を受け、薬を服用し、症状の急性期を過ぎれば、だいぶ落ち着く症状とのことでした。

歯科治療の際は、歯科医にも持病を伝えることで、治療のタイミングや適切な治療について、しっかりと相談してから始めること。そして、体調の安定した時期に治療を受けることが、適切な判断だったのだと思います。

私が実践している歯医者さんとの付き合い方

私自身、「精神病は危ないもの」「精神病は怖いもの」というイメージが強くあったため、「自分が統合失調症を抱えている」ということをカミングアウトできませんでした。

精神疾患をお持ちの方の中には、「口頭で自分の症状を説明することが難しい」という方が多いと思います。口頭で言わなくても、文章でも箇条書きでも構いません。「自分の病状を事前にメモしておき、歯科医の問診時にそれを見せる」という方法もひとつかと思いました。

最近では、ネット予約で簡単に伝えたいことを書いてから予約する、といったこともできるので、個人的にはネット予約で歯科を受診したいと思っています。

まとめ|精神疾患と口腔衛生管理の重要性

「医食同源」という言葉もあるように、食事は人生において最も大事な要素の1つです。食を楽しむことは、人生を向上させることでもあります。そのためにも、口腔衛生の管理はとても重要なことだと感じております。

精神疾患を持っている場合は、自分の衛生管理がおろそかになることが大変多く、また自分の身体的な健康の異常に気づきづらいことがあります。歯に何か違和感を感じた時は、手遅れになる前に、すぐ歯科医に相談してみるようにしましょう。

本文で筆者が述べているように、精神疾患が急性期のときは積極的な歯科治療や手術はするべきではありません。症状がコントロールされてから治療をしましょう。また、精神科主治医に「歯科治療をしてもよい時期なのか」などを相談してみるのもひとつかと思います。とても勇気がいることですが、ご自身の安全のためにも、ご自身の病歴はきちんと歯科医師に伝えるようにしてください。

[監修歯科医師:黒田 英孝]

ABOUT ME
ライターネーム「THIRA」
統合失調症を持つLGBT。大学を中退してしばらく療養していましたが、最近はライティング・海外記事の翻訳などのお仕事を少しずつさせていただいております。